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盲目少女と泥棒

​作者:銀狼

登場人物

あらすじ:ある屋敷に忍び込んだ泥棒。そこで目の見えない少女と出会う──

ナレ「賑やかな夜の街、一人の青年がお金持ちの屋敷に忍び込んでいた。屋敷に住む夫婦は家を空け、メイド達は夫婦が居ないことをいいことに、夜の街へと繰り出してた。屋敷はとても静かだった」


泥棒「お邪魔します…誰も居ないよな?お金になるもの、お金になるもの…」


ナレ「青年は棚の中を漁りだす」


泥棒「この部屋、何もないな…」

少女「誰かいるの?」

泥棒「!?」


ナレ「寝室から一人の少女が姿を現す。泥棒は少女と目が合い、顔を隠した」


少女「猫さんでも迷い込んだのかな?」


ナレ「泥棒は少女の言葉に驚きを隠せなかった」


泥棒「にゃ、にゃぁー…」

少女「猫さん!どこに居るのかな?猫さんおいでー」


ナレ「泥棒はゆっくり歩いてくる少女に、どこか違和感を感じた」


泥棒「にゃぁー」

少女「オスの猫さんかな?怖くないよぉーおいでー」

泥棒「にゃぁにゃぁー」

少女「ふふ…面白い人」

泥棒「にゃ!?」


ナレ「少女は泥棒を見つめ微笑む」


泥棒「遊ばれ…た…?」

少女「独り言が聞こえてたし、なんとなく、私よりも大きい人なのを感じるもん」

泥棒「感じるって…」

少女「泥棒さんかな?」

泥棒「お前は何も見てねぇ!俺は出で行く!だから叫ぶな通報するな!?」

少女「私は何も見えないし、出ていかなくても良いよ?」

泥棒「何言ってんだ…」

少女「その代わり、私に外のお話を聞かせて」

泥棒「外の話?」


少女「うん。外のお話」


ナレ「少女はそう言って窓側にある椅子に座った。月明かりが差し込み少女を照らす。泥棒は、少女の薄汚い姿を見て言葉を失った。とてもお金持ちの屋敷に居る少女とは、思えなかった」


泥棒「お前…ここの娘か?」

少女「うん。私ね、目が見えないの。だから外の世界を知らないの」

泥棒「目が見えない?…だからか…」

少女「だからね、外の世界のお話を聞きたいの!」

泥棒「なんで俺が…泥棒だぞ?」

少女「うん。だから聞きたいの!」

泥棒「…帰っていいか?」

少女「だめ」

泥棒「(溜息)…少しだけだぞ」

少女「ありがとう!こっち来て座ったら?」

泥棒「じゃぁ、座らせてもらう」


ナレ「泥棒は少女に向き合うように椅子に座る。丸いテーブルには花瓶に枯れた花が飾られていた。目が見えないとは言え、泥棒は目が合うたびに、落ち着かない気持ちだった」


少女「泥棒さんはどこから来たの?」

泥棒「どこから…」

少女「どんな所に住んでるの?」

泥棒「なんて言えばいいんだ。お前が想像してるような場所じゃないよ」

少女「いいよ。教えて?」

泥棒「俺は路地裏で生活してる。汚くて寒くて臭くて、薄暗い所だよ。そこに居る奴らは生きるために必死だ。ちょっと油断すれば、金になるものは奪われる。暴力で奪う奴や、寝てる時に盗んでいく奴」

少女「なんでそんな所で生活してるの?」

泥棒「そこでしか生きていけないから。お金はない、俺を雇ってくれる奴も居ない。誰もが俺を避け拒絶する。そんな俺には路地裏しかないんだ」

少女「なんで?」

泥棒「こんな話しても、つまんないだろ。話を変えよう」

少女「私は面白いよ?だからこの話のままでいいの。聞かせて?」

泥棒「なんでそんなに聞きたがるんだ」

少女「綺麗な外のお話しか、聞いたことがないから」

泥棒「綺麗な外?」

少女「うん。外の世界はね、綺麗な人が居て、綺麗な建物がたくさん並んでて、綺麗なもので溢れてるんだって。とっても賑やかでキラキラしてて、色鮮やかな素敵な所だって言ってた。泥棒さんの言った汚くて、寒くて、臭くて、薄暗い所を私は知らない、聞いたことのない世界。だから、知りたいの。聞きたいの。泥棒さんのお話はつまらなくないから。もっと私の知らない世界を教えて?」

泥棒「そのお話は、親がしてくれるのか?」

少女「うん!沢山お話をしてくれるの!」

泥棒「親のことは好きか?」

少女「大好き!目の見えない私を深く愛してくれるの。この前は、ふわふわのクマさんのぬいぐるみをプレゼントしてくれたの!とっても優しいお父様とお母様よ」

泥棒「…そっか」


ナレ「少女のみすぼらしい姿から語られる言葉に、泥棒は何も言えなくなった」


少女「泥棒さんのご両親はどんな方なの?」

泥棒「…クズだよ」

少女「ご両親のことが嫌いなの?」

泥棒「嫌いだな。大人なんて大嫌いだ」

少女「なんで?」

泥棒「…両親から暴力を受け、顔に一生消えない火傷を負わされた。…誰もが俺を哀れみ、蔑み、避け、化物のように見る!働きたくてもこの顔じゃぁどこも雇ってくれない。でも、生きるためにはお金が必要だ!!どんな事をしてでも!!……ほんとは泥棒なんてしたくねぇよ…」

少女「泥棒さん…」

泥棒「俺は何を…!今の忘れろ!!したくて泥棒してんだ!!」

少女「ふふっ。はいはい」

泥棒「もう帰る!俺のことは、誰にも言うなよ!」

少女「だめ。まだお話、聞きたい」

泥棒「お前に話すことなんてねぇよ」

少女「だったら、お父様に言う」

泥棒「このガキ…」

少女「ねぇ?さっきの話なんだけど、やけどって何?」

泥棒「は?火傷を知らねぇのかよ」

少女「うん」

泥棒「熱いものに触れると、怪我するんだよ。酷い火傷だと肌がただれる」

少女「顔に怪我をしてるってこと?」

泥棒「分かりやすく言えばな。けど、俺の場合死ぬまでこの怪我を抱えなくちゃいけない」

少女「触ると痛い?」

泥棒「痛くないよ。昔の火傷だからな」

少女「触っても良い?」

泥棒「はぁ!?触るって俺の顔にか?」

少女「どんなのか分かんないから」


ナレ「少女は泥棒に手を伸ばす。泥棒は小さくため息をつき、少女の手を掴み火傷に触れされる」


少女「ゴツゴツしてて固くて変な感じ。…けど、こっちはゴツゴツしてないし柔らかくて暖かい」

泥棒「もう良いか?」

少女「泥棒さん、優しい顔をしてる人だね」

泥棒「してねぇよ。化物って言われる醜い顔だ」

少女「そうかな?確かにこっちはゴツゴツしてるけど、触ってたら分かるよ。優しい人の顔をしてる」

泥棒「馬鹿じゃねぇの」


ナレ「泥棒は顔から少女の手を離す」


少女「なんで?」

泥棒「お前は見えないからそんな事を言えるんだ。俺の顔を見れば、お前だって化物って思うはずだ」

少女「化物だなんて、思わないよ?泥棒さん優しい人だもん」

泥棒「いやいや、どこがだよ!?」

少女「泥棒さんなのに、私と会話してくれてる所とか?」

泥棒「脅して帰らせようとしないのはお前だろ」

少女「だってこんなにも楽しいお話は久しぶりだから」

泥棒「楽しい話なんかしてないけどな…」

少女「私は楽しいから良いの」

泥棒「変なガキ」

少女「変な泥棒さん」

泥棒「…」

少女「…」

泥棒「帰っていいか?」

少女「だめ」

泥棒「いや、もう話すことなんてないだろ」

少女「あるよ?」

泥棒「ねぇよ!」

少女「泥棒さん何歳なの?」

泥棒「泥棒に年聞いて、どうすんだよ」

少女「泥棒さんのこと知りたいの」

泥棒「知ってどうするんだよ」

少女「お友達になる?」

泥棒「…ごめん。変な幻聴聞こえたから、もう一回言ってくれ」

少女「泥棒さんとお友達になる!」

泥棒「おい、泥棒ってどんなやつか知ってるか?お前の家に忍び込んで、物を盗むやつだぞ?」

少女「うん!泥棒さん優しい人!」

泥棒「…あーもう!調子狂うな!!」

少女「私は15歳。泥棒さんは?」

泥棒「知らない奴に簡単に年齢とか言うなよ」

少女「もう泥棒さんは知らない人じゃないもん

泥棒「おま…(ため息)19」

少女「19歳なの?」

泥棒「そうだよ」

少女「とっても若いんだね」

泥棒「俺より若いガキに、若いとか言われなくねぇな」

少女「名前は?」

泥棒「そんなものない」

少女「ないの?」

泥棒「名前なんて捨てた」

少女「私はアリア」

泥棒「あっそ」

少女「覚えてね?」

泥棒「覚えない」

少女「で、泥棒さんの名前は?」

泥棒「捨てた」

少女「じゃぁ私が名前つけてあげる」

泥棒「名前をつけるって、俺はお前のペットかよ!」

少女「ううん。お友達」

泥棒「俺は認めねぇ」


ナレ「ふたりが会話してる間、屋敷に一人帰ってくる姿があった」


泥棒「いいか。俺は泥棒で、お前は盗みに入られた屋敷の娘だ。友達にはなれない」

少女「そんなの関係ないもん」

泥棒「なんでそんなに友だちになりたがるんだ」

少女「友達が居ないから」

泥棒「お前…もしかして屋敷から出たことない?」

少女「ないよ?」


ナレ「当たり前のように言う少女に泥棒は少女の両親に対して不信感を覚え始めていた」


泥棒「屋敷から出てみたいとかさ、思わねぇのか?」

少女「出てみたいけど、お父様が危ないって言うから出ちゃだめなの」

泥棒「けど、出たいんだろ?」

少女「うん」


 SE:ノックオン

(3人で演じる際は、父親が退場するまで泥棒がナレーションをお願いします)


父上「アリア、起きてるか?」

少女「お父様だわ」


ナレ「泥棒はすぐに身を隠せる所を見つけ、隠れる。扉が開き、威厳のある男が部屋に入る」


父上「アリア、まだ起きていたのか」

少女「ごめんなさい。眠れなくて…。今日は帰らないと言ってましたけど、早く帰られたのですね」

父上「アリアに会いたくてね…先に帰ってきたのだ」

少女「そうだったんですね」

父上「あぁ…さぁアリアこっちにおいで」


ナレ「男は少女を抱きしめ、少女の後ろにあるボタンを外し始める」


少女「何を、なされてるんですか?」

父上「今日はお母さんが居ない。久しぶりにお前の体を見せてくれ」

少女「お、お父様。だめです」

父上「なぜ恥ずかしがる。久しぶりだからか?大丈夫だ。優しく愛でてやる」

少女「お辞め下さい。お父様」

父上「すぐに抵抗出来なくなる。安心しろ」

少女「お、お父様…お辞め…下さい」


ナレ「少女の白い肌があらわになる。少女と男を見つめる泥棒は、少女と話して感じた不信感に納得をした。同時に、怒りで震えていた」


少女「た、助けて…」

父上「なぜ助けを求める。お父さん悲しいぞ?こんなにも沢山の愛情を注ぎ、沢山愛でてきたと言うのに。最近、構えなかったからか?寂しい思いをさせたからか?大丈夫だ。すぐ気持ち良い事を思い出させてやる」

泥棒「これだから、大人は嫌いなんだ!どいつもこいつも腐ってやがる!!」

父上「な!?」


ナレ「泥棒は隠れていた所から飛び出し、男を殴る」


少女「泥棒さん?」

父上「っ!?きっ貴様!!誰だ!!私の屋敷でなにをしている!!」

泥棒「親のくせに平気で娘を汚すとか、クズ以下だな」

父上「貴様に何が分かる!!」

泥棒「腐りきった大人ってことは分かったよ。俺は最近、街を騒がせている泥棒だ」

父上「火傷持ちの泥棒・バン!」

泥棒「名前を知って頂けてるとは嬉しいね。俺の知名度も上がってきたか。そう、火傷持ちの泥棒・バンってのは俺のことだ!貴様の娘を盗ませてもらう」

父上「ふざけるな!私のモノだぞ!!」

泥棒「娘をモノ扱いしてる時点で親失格だ」

父上「なんだと!!」


ナレ「泥棒は少女に、着ていたコートを被せ、抱える」


少女「きゃっ」

泥棒「俺が外に連れてってやるよ」

父上「させるか!!」


ナレ「男は泥棒に飛びかかるが、泥棒は簡単に避け、部屋から飛び出し玄関に向かって走る」


父上「アリア!!待て!!返せ!!」


ナレ「泥棒は外に飛び出し、少女と共に闇へと消える」


父上「私のアリア!!アリア!!許さんぞバン!!必ず見つけ出しアリアを取り戻すぞ!!」


ナレ「泥棒は男が追ってこないの事を確認すると、少女を下ろした」

 


泥棒「大丈夫か?」

少女「うん」

泥棒「勝手に連れ出したが、戻りたかったら言えよ。あんなクズのもとに帰るって言うなら、止めはしない」

少女「…ううん、大丈夫。ありがとう、泥棒さん。じゃなくてバンさん?」

泥棒「バンって名前は、街の奴らが勝手につけた名前だ。俺の名前は、スカイだ」

少女「スカイ…綺麗な名前」

泥棒「寒くねぇか?とりあえず、服と寝床だな」

少女「どこ行くの?」

泥棒「連れ出しちまったからには、面倒見ないとだし。とりあえずどっかだ」

少女「私、目が見えないから邪魔になるよ…?」

泥棒「ならねぇよ」

少女「お父様に見つかったりしたら?」

泥棒「何年、泥棒してると思ってんだ?そんな簡単に見つかってたまるか」

少女「いいの?」

泥棒「じゃなきゃ連れ出してない」

少女「…スカイさん。あのね?お父様の事が大好きなのは本当なの。けどね、少しづつお父様じゃなくなっててね、無理やりね…けど、お父様はお父様で今でも大好きでね…けど…ぅ、ぐす…うわぁん(泣く」

泥棒「アリア、約束してやるよ。お前の知らない世界を沢山教えてやる」

少女「ありがとう」

泥棒「沢山泣け。泣けばスッキリする」

少女「うん。…もう大丈夫」

泥棒「なら、移動するぞ」


ナレ「泥棒は少女を抱え、また走り出す。


こうして、盲目少女と火傷持ちの話は始まる」

 


─END─

​・少女(15)【♀】生まれつき目が見えないため、外の世界にとても興味を持っている

・泥棒(19)【♂】顔にひどい火傷を負っているため、仕事に就けず泥棒をしている。大人を憎んでいる

・父上(47)【♂】娘を娘とは思ってない父上

・ナレーター【不問】


※父とナレーター被りにより、セリフ数は均等になると思います。
一部泥棒がナレーションをして頂く部分がありますが、4人で演じる際は泥棒ナレーションはナレーションが読んでください

役決め表

・少女:

・泥棒:

・父上

・ナレ:

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