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● 民宿「せせらぎ」に向かう増田 
  山間の緑豊かな場所、近くに小川が流れている、蝉の声。夏のSE 
  緩やかな上り坂を歩く、増田(26) 
 


増田「民宿「せせらぎ」だったよな。 
   結構…距離あるなぁ…もう少し先か?…あいつら、もう着いたかな」  

 

 ●民宿「せせらぎ」 古民家を改装した洒落た民宿 
  玄関先で増田に声をかける越後、登場 
  増田と越後は職場が近いです。


越後「ますだ~!!遅いぞ~!」 

増田「おお!越後!!悪い!!結構、坂がきつくてさ」 

越後「お前、また少し太ったか??鍛えろよ!」(お腹に軽くパンチ) 

増田「俺はお前みたいに筋トレの趣味はないの!…で、あいつらは?いるのか?」 

越後「ああ!とっくに集まってるよ!!部屋で飲んでる」 

増田「お前も、部屋で待ってればいいのに」 

越後「誰かさんが、方向音痴でなけりゃ~そうしたよ」 
  
●民宿「せせらぎ」オーナー 神野登場 
 

越後「すみません~!!最後の1人が着きました!!」 

神野「は~い!!どうも、いらっしゃませ、場所が分かり難くて大変でしたでしょう? 
   迷いませんでした?」 

増田「あ、いえ。仕事の都合もあって、予定より出発が遅れてしまっただけですから。 
   今日はお世話になります」 

神野「あらためまして「せせらぎ」オーナーの神野(じんの)と申します。 
   ようこそお越しくださいました。ごゆっくりなさってくださいね」 

増田「ありがとうございます。林から聞きましたが、まだ民宿はオープン前だとか」 

神野「そうなんです、正式なオープンは二週間後になります。 
   なにもかもが初めての事で、困っていた私の相談に林さんがのってくれて。 
   そのお礼もかねて、最初のお客様になっていただきました」

 

増田「そうでしたか、招待していただけて光栄です」

 

越後「その辺の話もまた後で伺います!!」

 

神野「はい、林さんのお祝いもありますし、夕食の席でまた」 
  
 ●二階の部屋に向かう   

 ここから気分は高校時代に戻っています
 気の合う仲間との会話です。


越後「美人だろ、オーナー」 

増田「林のやつ、絶対オーナー狙ってたんだろ」

 

越後「ま、相手にされなかったって話だな。…俺もさっき軽く流された」 

増田「はぁ??お前にはゆかりちゃんがいるだろう~」 

越後「ゆかり?とっくに別かれたよ」(あっけらかんと) 

増田「なんで?」 

越後「いろいろな…筋肉馬鹿に付き合いきれないって事だろ。まぁ仕方ないさ」 

増田「おまえ、もしかしてさ…」 

越後「ん?なに?」 

増田「俺のことが好きなの?」 (からかって)

越後「はぁ~。 (大きくため息)オレはもっと趣味がいいよ」


 ●8畳と6畳の二部屋、新しい畳の匂い 二階にあり眺めも良い 
   林・鳥居 登場。 
       

越後「増田きたぞ~!!」 

鳥居「よお!!増田!!久しぶり!!」 

林 「増田も変わらないね、元気だった?」 

増田「おお!!久しぶり!。林!!おめでとう結婚!!お前らもかわらねぇ~な」 

越後「いや、こいつ太ったよな?今もケーキばっか食ってんのか?」 

増田「食ってねーよ!!そんなに太ってないだろっ!!」

林 「増田はあの頃から女子なみにスイーツに詳しくてさ。 
     何度か一緒にケーキ食べに出かけたよね」 

鳥居「マジか?男二人で?何でオレも呼んでくれなかったっ!!」 

林 「だって、鳥居と越後は甘いもの嫌いだったし。 
   店には女子ばかりでさ、俺たちジロジロ見られてたよ」 

増田「そうだったか?よく覚えてるな~」

 

林 「増田はケーキに夢中で、周りの状況に全く意識がなかったからね」 

越後「こいつ今でもそんなところがあるぜ」 

鳥居「それでか!林と増田が付き合ってるって噂が出たのはっ!!」

 

増田「はあ?!なんだそれ!!知らねーぞ、そんな話!!」

 

林 「あ、それ、オレが流した」

鳥居・増田 「はあ???」← [声を合わせる必要なし]

林 「いや、ついね、面白そうだと思って」

越後「やっぱり、林だったのか~。林は、女子に人気だったからなぁ 
   盛り上がってたな、あの噂は」

 

増田「は~や~し~!!オレ、そんな目で女子に見られてたのか?! 
   彼女ができなかったのはお前のせいだ!!」 

鳥居「いやいやいやいや、それは関係ない。だって林には彼女いたし」

 

林 「そうそう、ごめん増田。それはオレ、関係ない」 

越後「林はそんな悪戯ばかりしてたよな」 

鳥居「越後だって面白がってたくせに」 

増田「おまえらなぁ~!!」 

鳥居「まぁまぁ!お前も飲め!!林からの差し入れだ」

 

越後「持ち込み大丈夫なのか?」 

林 「今日だけは特別だよ。あ、でも、夕食の時の飲み物は有料だからね。 
   ここの売り上げに貢献してくれ」 

鳥居「任せておけって!!あの美人オーナーの為になっ」

 

増田「林が相談にのってあげたんだろ?」

 

林 「相談っていうか、オレが実家の農家を継いだ話は、随分前にしたよな? 
   作った作物を飲食店とか、こういった宿泊施設に卸していてさ。 
   神野さんもお客様の1人になってもらったんだよ」 

越後「営業みたいな事もしてるのかぁ、林は人当たりがいいから向いてるかもな」 

林 「販売ルートの確保はどんな仕事でも重要だからね。 
   ここで民宿経営を始めようとしている神野さんを手伝う事は、俺の仕事の助けになるし。 
   特別、感謝される事ではないんだよ」

 

鳥居「えらい!!林はえらいな!!!飲め飲め!!結婚しやがってこのやろ~っ」 

越後「いや、これからだって。もう、酔っ払ってるのか鳥居は~」 

林 「増田と越後は職場が近いんだよね、たまに会ったりしてるの?」

 

越後「偶然、仕事帰りに会ったとき、飲んだりな。 
   最近はお互い忙しいから、、中々なぁ」

 

増田「あ、浴衣ないか?着替えたいんだが…」 
 

●荷物をゴソゴソと探す鳥居 


鳥居「あ、そうだ!!…これを着ろ増田!!」 


 ●萌?美少女キャラ「漆黒天使」のプリントTシャツを取り出す鳥居 
 

増田「Tシャツ?…お前これっ!『キャラコン』の『漆黒天使』!!」 

鳥居「そうだ!『キャラコン』!!みんなの分あるぞ~、俺たちのユニホームだっ!!」 

越後「プリントTシャツ?マジか…作ったのかよ…」

林 「うわ~懐かしいなぁ~鳥居の描いた美少女キャラ」 

 
増田M『キャラクターデザインコンテスト』通称『キャラコン』 
      
    夏祭りに行なわれるイベントの1つだ。
      
    出されたお題から、キャラやその設定を考えイラスト作品として制限時間内に

 

    完成させる。      
      
    このイベントに、積極的だったのは鳥居だった。 
      
    帰宅部同然の俺達に声をかけ、美少女キャラへの愛を熱弁したのだ。 
      
    その勢いに押され、高校二年の夏休み俺達は参加した』 
 

鳥居「楽しかったよなぁ~!オレがキャラデザインで、増田がキャラ設定、背景が林、 

   越後が…なんだっけ?」 

越後「お前の監視役だよ!!おまえ、すぐ暴走するからな」 

林 「鳥居は自分の描きたいものを描こうとするしね」 

越後「あのコンテスト、時間制限も厳しくて焦りまくったな」

 

鳥居「増田の部屋をかりたんだよな~、ちょっとここ、似てないか?」 

越後「言われてみれば…」 

増田「オレの部屋じゃなくて、爺ちゃんの部屋だよ」

林 「あの時のお題、覚えてる?」

 

越後・増田 「守護天使」 [声を合わせようとする必要なし。林の問いにそれぞれのタイミングで返事]

鳥居「漆黒天使!!」

 

越後「それはお前の妄想だ!!」 

鳥居「え?うそだ~??おれ黒い羽描いたよな??漆黒の!!」

 

越後「お前のその妄想を修正するために、オレがあの時どんだけ説明したか 忘れたのかぁ~?」 

林 「あの時の…二人のやり取り。…漫才みたいで面白かったなぁ
   今思うと、凄いお題だったね。守護天使って(思い出しながら笑う)」

越後「お前はいつも余裕だったよ。
   あのお題って、ちょっと流行ったアニメか漫画かなんかの影響だろう」

 

鳥居「オレの『漆黒天使』最高だったろう??」 
 
増田「…結局、間に合わなかったんだよな時間に…俺が…」 
       
●3本目のビールを飲みながら増田が呟く一言に、騒がしい会話がとまる 
 

越後「ばか、何言ってんだよ。時計だよな。確か、時計が遅れてたんだよ」

 

鳥居「古い壁掛けの振り子時計だったな、丁度あんな感じの…」 
 

●みなが時計を見つめる。振り子時計の音が大きくなるSE 

増田M『あれ…?なんだ?急に眠気が… 
    まさか数本のビールで酔いがわるなんて…』 
 

●テーブルにぶつかる音SE そのまま意識を失う  
 
●高校時代に飛びます。『キャラコン』の日。夏の日SE。焦りまくる3人。 
 増田1人、夢と現実の境にいます 
 越後の声がだんだん大きくなっていく、夢から高校時代に。 
 増田の( )内のセリフは心の声。 
 

越後「増田!増田!!おきろ増田!!」 

増田「あ…俺、ねてた…酔っ払ったかな…なんか、暑くないか?」 

越後「はあ??なに寝ぼけてるんだよ!!時間がないんだぞ!!」 

増田「は?」

林 「越後、増田の事はいいからっ!鳥居がまた暴走してる」 

鳥居「ここが一番大事なんだよ…羽のリアリティーがさ…。
   ふわっと柔らかい感じじゃないと、包み込まれた時の幸せが…」

越後「包み込まれる話は、また今度にしてくれっ!だいたい、漆黒の羽って天使か?? 
   それ悪魔だよな?お題は『守護天使』だぞ!」 

鳥居「おまえには、この萌えが分からないのかっ!!この背徳と禁忌… これが俺の天使っ!!」

 

越後「だからなんだよ、その不健全な響き!もっと、…なんかあるだろう?」

増田「何してるんだ?なんか…お前ら、すっげー若いな」 

越後・鳥居「はぁ??」[声を合わせる必要なし]

林 「…増田?大丈夫?『キャラコン』…覚えてる?」 

増田「ああ…もちろん。(これは…あの時の夢?夢を見てるのか俺は)」 

林 「鳥居の『漆黒天使』に設定を与えて、『守護天使』にするしかないね」 

越後「マジか?!あ~増田、何か考えてくれ!!」 

増田「…ああ?…え~と、わかった…(なんだこの感じ?夢にしてはリアルすぎ…)」 

鳥居「俺の天使は…やっぱり色白で…」[嬉しそうに呟きながらペンを走らせる]

  

増田「…(俺はあの時、どんな設定を考えたっけ…たしか…)…人を愛する天使…」
       
林 「天使ってどんな時でも愛してくれそうだけど?」

増田「羽は黒…あ~、闇に堕ちた天使が…世界を知って、人を愛し、天使に戻る…だったか」

 

林 「天使に戻る?
   堕天使の改心か…そして守護天使に…いいね。
   鳥居!羽の黒に、白を少し入れられる?徐々に、純白の羽に戻るイメージで」

 

鳥居「任せとけっ!!」 

越後「さっぱり分からん…。とりあえず、時間がないし細かな背景を描く余裕はないな」

 

林 「イメージは分かったから、なんとかしてみるよ」 

増田「(この感じ、懐かしいな…空気が、手触りがリアルすぎて… 
    やっぱり、あの鳥居のプリントTシャツのせいかな…記憶がよみがえる) 」

●ノートで殴られる増田 


増田「っいて!!…痛い?」 

越後「さっきから何ぼーっとしてんだよ増田は」 

増田「あ…悪い…(痛みを感じる夢って…初めてだ)」 
 

●時計のSE 少し間をあけて。
         

林 「あと、30分か…間に合いそうだね。受付会場に行く準備もしようか」

 

越後「そうだな、軽くもう一度見直して…」 

増田「(…あの、振り子時計…これも、あの時と同じか?…まさかな、いや、でも…!) 」

増田「なぁ!…今何時だ?時計、時計はっ」

 

林 「増田?…まだ大丈夫だ、時間は」

 

増田「違う!そうだ!あの時計は、遅れてたんだ!!みんな急げ!!」

  

越後「っ!!あと、10分?!みんな走れっ!!」 
 

●家を飛び出し、イベント会場に走り出す 
 林は足が遅い 鳥居は無駄な動きが多い、増田は俊足 越後人並み
 増田の鼓動SE とか… 


増田「(なんなんだよ、この夢っ!…夢?夢だよな?!どこかで目が覚めるよな?! 
    全力で走ってるこの感じも、汗も、あいつらの存在そのものがリアルすぎるっ)」
       
鳥居「間に合ったら、カキ氷食おうぜ~!」

増田「(そしてオレはここで間違えた)」

越後『どこいくんだ増田、左だ、左っ!!受付!集会所だぞっ』 

増田「(あの時、集会所ではなく、祭り会場の公園だと思っていた)」

増田「ごめんっ!!おれはあの日、間違えたんだ!!」

 

越後「はぁ~!!何の話だ?!」

鳥居「見えた!!もうすぐだ、走れぇ~!!」 


 ●夢から覚めます 林の声がだんだん大きくなります。 


林 「増田、増田!起きろよ、夕食の時間だよ」 

増田「…はやし?…林?!っみんな、間に合ったか??」 

林 「は、間に合った?なにが?」

越後「遅刻する夢でも見たのか~」

 

増田「あ…夢…」 

鳥居「増田は飲みすぎなんだよ~酔っ払ってさ~」 

越後「飲みすぎはお前だ、鳥居」 

鳥居「俺はまだまだ飲めるぜ~今夜は飲みまくるぜ!」 

 
神野「夕食の準備が出来ました~」

 

鳥居「はぁ~い!!今いきま~すっ!!旅行ってやっぱこれだよなぁ~メシメシ!!」

 

越後「待てっ!!そのTシャツで行く気か?!」 

鳥居「当たり前じゃんっ!!神野さんにも見てもらおうぜ!」 

林 「面白そうだからいいんじゃない?」

 

越後「全く。本当に変わらないなぁ~お前らは」 
 
増田「あ!あのさ、悪かったな」

 

越後「?なんだよ急に」 

増田「あの時…俺が道を間違えたから…間に合わなくなって」

 

鳥居「は?あの時って…?いつの話?」

 

増田「キャラコンだよ!!時計も遅れてたけど…俺が道、間違えて…」

 

越後「間違えて?間に合わない?全く分からないんだが?」 

林 「時計は確かに遅れてたね。でもそれに気づいたのは、増田だよ。 
   道だって間違えてないし。…なんか変ないい方してたけどね」 

越後「俺たち、間に合っただろ!」

 

増田「間に…あった…?俺たち間に合った?」 

鳥居「そうーだよ!!ギリギリセーフ!!なんだよ増田~忘れんてんのかぁ~ 
   なら、今夜はあの日の話を、お前が思い出すまで聞かせてやるぜっ!」

   

増田「…ああ、頼むよ」

 

鳥居「任せとけ!」

 

●ここから少しずつフェードアウト

 

鳥居「あ~腹減ったな~夕飯楽しみ~」


林 「ここの料理人は腕がいいよ、俺が保障する」


鳥居「マジかっ!!じゃ~その人にもこの漆黒天使Tシャツ見てもらおうぜ」


越後「料理人って知り合いなのか?」


林 「あれ?言ってなかった?俺の奥さんだよ」


越後・鳥居 「聞いてねーよっ!!」←[声を合わせる必要なし]

 

● ラストです。

増田M『あれはなんだったのか。俺の記憶違いなのか…。
    さっぱり分からない。
    でも、それでいい。聞かせてもらおう、みんなに。
    あの最高に楽しい、夢の続きを』

役決め表

・増田 ♂:
・越後 ♂:
・鳥居 ♂:    
・林  ♂:     
・神野 ♀:

あらすじ:高校時代の友人の結婚をきっかけに、久々の再会に喜ぶ4人 
     懐かしい想い出の場所で不思議な夢に迷い込む

​・増田 ♂【26】甘い物好き、 いじられキャラ 
・越後 ♂【26】筋トレ好き、優しい父親のような 
・鳥居 ♂【26】アニメ大好き、凝り性、お調子者 
・林  ♂【26】結婚間近 農家 悪戯好き 冷静 
・神野(じんの)♀【33】民宿「せせらぎ」オーナー 出身は東京

登場人物

​作者:yumi

夢のつづき

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