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死神は愛を囁く

​作者:銀狼

登場人物

あらすじ:愛されないと自分を愛せない女性の前に一人の死神が現れる。死神は女性を優しく愛し──

女性(M)「私は寂しがり屋だ」


女性「ねぇーまー君」(甘ったるい声で) 

彼氏「…」 

女性「ねぇーってばぁー」

彼氏「…なに?」
 
女性「なにって、今日冷たくない?」 

彼氏「…(ため息)」 

女性「なによぉ」 

彼氏「お前ってさ、顔は良いけど、顔だけで中身は何もねぇよな」 


女性(M)「聞きなれたセリフ」
 

彼氏「なんか飽きたわ」 

女性「飽きたって…何言ってるの?」 

彼氏「俺帰るわ」 

女性「ちょっと」 

彼氏「後で連絡する」
 

女性(M)「人に愛されるのは簡単だけど、捨てられるのも簡単」 


女性「…後でっていつよ。どうせ、連絡なんてしてこないんでしょ。私の顔が好きだったんだから」 


女性(M)「誰かに愛されてないと自分を愛せない。 男なんていくらでも出来る。 けど、愛してくれるのは顔だけ」 


女性「(ため息)…誰か私を愛して」 

死神「良いですよ。私(わたくし)が愛して差し上げましょう」 

女性「え…」 

死神「こんにちわ」 

女性「…誰」 

死神「私(わたくし)は通りすがりAです」 

女性「不審者Aですね。理解しました」 

死神「どこからどう見て不審者だと言うのですか!」
 
女性「いや、どこからどう見ても不審者にしか見えないわよ」 


女性(M)「けど、無駄にイケメン」 


女性「てか、どこから入ってきたのよ」 

死神「どこから…そうですね。怪しまれないためにも、玄関からってことにしておきましょうか」 

女性「なにそれ。尚更怪しすぎて怖いわ」 

死神「怪しくなどありませんよ」 

女性「とりあえず、今すぐ帰ってください。今なら私の夢ってことで忘れるので」
 
死神「本当に帰って良いのですか?」 

女性「当たり前じゃない」 

死神「愛して欲しいんじゃないのですか?」 

女性「知らない人に愛されたいなんて思ってないわよ」 

死神「私は貴女のことを知ってますよ。…一目惚れでした。貴女を見た瞬間!身体中に電気が走るような衝撃を受けました!!」 

女性「気持ち悪」 

死神「誰よりも醜く真っ黒な魂は、実に!!惚れ惚れ(ほれぼれ)するもので…」 

女性「は?」
 
死神「なのに魂の中身は空っぽ!!誰かに愛されないと満たされない魂なんて!!見たことがありません!!是非とも私で貴女の魂を満たしたい」
 
女性「あんた何なのよ!喧嘩売ってんの?」
 
死神「私は通りすがりAではなく正しくは死神Aなのです」
 
女性「あんた頭がおかしいんじゃないの…今すぐ出てって。本当に警察呼ぶわよ」
 
死神「そう怒らないで下さい。美しいお顔が台無しですよ?」
 
女性「あと5秒で出てって。5、4、3、んんっ!?」(キスされる
 
死神「…驚いた顔も素敵ですね。少しずつ貴女の魂が満たされていくのが分かりますよ」

 

女性「なっ!?何するのよ!!」 


女性(M)「柔らかく甘いキス。ドキドキした。なんて簡単な私」 


死神「私は貴女に一目惚れをし、貴女のことを知りたい満たしたい。貴女は今、愛してくれる人を求めている。出ていく理由が見当たりません」 

女性「本当に…何なのよ…一目惚れとか魂とか死神とか…理解できない」
 
死神「 理解出来なくても大丈夫です。私に心も体もお預け頂ければいいんです」 


女性(M)「甘い言葉。揺れる私は本当に軽い。私を愛してくれるのなら誰でも良い。空いた心を埋めて。私を愛して。私だけを愛して。私だけを見て。私だけ…私を…」 


死神「そうだ!お腹空いていませんか?」 

女性「え…ちょっと空いてるかな」 

死神「いい時間ですし、私夕食を作らせて頂きますね」 

女性「なんでそうなるの」 

死神「私、料理が得意なんです。好きな人の胃袋を料理で掴めれば勝ち同然ですよ」
 
女性「ふーん」 

死神「まぁまぁ期待してて下さい。台所お借りしますね」 

女性「ご勝手にどうぞ」 

死神「(鼻歌)」(少し小さめに 


女性(M)「男性に料理作ってもらうのは初めて。私が作る側だから、変な感じ。 心地よい音が台所から聞こえてくる。懐かしさを感じる。 私はこの音が大好きだった。お母さんの後ろ姿に美味しそうな匂い。優しい声で私の話を聞いてくれる。 1番幸せだった頃」 


(着信音) 

女性「…も、もしもし。まー君?」 

彼氏『あ、もしもし?さっきはごめん』 

女性「別にいいよ」
 
彼氏『最近色々あったからさ。八つ当たりみたいなもんで…。だから、ほんとごめん』 

女性「うん」 

彼氏『飽きたとか思ってねぇからさ』 

女性「…」 

彼氏『ごめん』 

女性「…うん」 

彼氏『大好き』 


女性(M)「ぐちゃぐちゃだ」 


女性「うん。大好き」
 
彼氏『良かった…。ありがとう』 


女性(M)「ぐちゃぐちゃだ。ぐちゃぐちゃだ。ぐちゃぐちゃだ。ぐちゃぐちゃだ」 


彼氏『今から行ってもいい?』

女性「ご、ごめん。ちょっと具合い悪いから…」 

彼氏『大丈夫か?』 

女性「少し休めば大丈夫」
 
彼氏『そっか。分かった』
 
女性「ごめんね」 

彼氏『いや、大丈夫。じゃぁ切るか』 

女性「…うん」 

彼氏『んじゃ…またな』 

女性「うん……(ため息)」

 
女性(M)「頭が痛い」

 
死神「後は待つだけです!…どうしたんですか?大丈夫ですか?」 

女性「…大丈夫」 

死神「嘘です。私の前で無理はなさらないで下さい。貴女のそのような顔は見たくありません」

 

女性「…」 


女性(M)「あんたのせいとか言えるわけない」

 
死神「私の前では素直になっていいんですよ」

 
女性(M)「でも、でも、でも、でも…私を愛してくれる人を手放したくない。」


 死神「…分かりました。そろそろ出来上がりますから、夕食にしましょう」


 女性(M)「知らない人なのに、愛してくれるってだけで手放したくないなんて…なんて汚れきった考えなんだろ。1人になりたくないの。愛して欲しいの」
 

女性「…苦しいよ(ボソッ」 

死神「出来ましたよ!」 

女性「…」 

死神「死神作、冷蔵庫の中にあったものでうどんです!!」
 
女性「うどんって…ふっ…あはは」 (吹き出すように

死神「な、何かおかしかったですか?」
 
女性「ううん。頂きます」
 
死神「はいっ」 

女性「ふぅーふぅー…はふっ」 (熱そうに

死神「…どうですか?」 

女性「美味しい」 

死神「本当ですか?それは良かったです!」
 
女性「うどんなんて作るの簡単じゃん」
 
死神「そんなこと言わないでくださいよ!冷蔵庫を見たら、うどんしか作れるもの無かったんですから」

 

女性「ほんと美味しい」 

死神「ただのうどんとは言え、私の愛情たっぷりですからね!」 

女性「…」 


女性(M)「苦しくなって喉に通らなくなる」 


死神「どうしました?なにか嫌いなもの入ってました?」
 
女性「ごめん。…ちょっと眠たくて。後で温め直して食べるから」
 
死神「大丈夫ですよ」 

女性「…ありがとう」 


女性(M)「変な死神」

 
死神「ゆっくりおやすみ下さい」 

女性「ありがとう。ちょっと寝るね…」
 
死神「はい」 


女性(M)「大きく冷たい手が優しく頭を撫でる。不思議と落ち着いて…」 


死神「………いい感じに魂が更に醜く歪んでいくのが分かりますよ。もっともっと醜く黒く歪んで行って下さいね。」 

 

彼氏「大好き」 

女性「まー君。私も大好き」

彼氏「あぁ。ずっと一緒だ」 

女性「うん。ずっとずっと私を愛して」

彼氏「当たり前だよ。ずっとお前だけを愛するよ」
 
女性「約束だからね」 

彼氏「約束」 

死神「貴女を愛するのは私ですよ」 

女性「死神…」 

彼氏「お前誰だよ」
 
死神「私は死神でございます。彼女を迎えに上がりました。貴方様には不釣り合い過ぎます故ご了承下さい」

彼氏「何言ってんだ。こいつは俺の彼女だ。誰だか知らねぇけど、怪我する前に消えろ」 

女性「ちょ、2人ともやめて…」 

彼氏「こいつを庇うのか?」 

女性「そ、そうじゃないけど…」 

死神「貴女に永遠の愛を誓います」
 
女性「私には彼氏が…」

 

死神「貴女を不安にさせるような事はさせません」 

女性「…」 

死神「私は貴女を幸せに出来ます」 

彼氏「おい。こんな戯言に騙されるなよ?」
 
女性「わ、私は…」
 
死神「愛してます」 

彼氏「愛してる」 

女性「私は…」 

死神「さぁ私の手を取ってください」 

彼氏「俺から離れるなよ」 

女性「私は…私は…」 

死神「──さんは私を選んでくださいますよね?」(─は何も言わない 

彼氏「──は俺から離れないよな?」 

女性「お、お願い!!!やめて!!!!!」 

 

死神「大丈夫。大丈夫」
 
女性「…しにがみ?」 

死神「あ、起きられましたか」
 
女性「…うん」 

死神「随分うなされていましたけど、大丈夫ですか?」 

女性「大丈夫。ありがとう」 

死神「それは、良かったです」 

女性「…死神」(死神を抱きしめる
 
死神「どうなされたんですか?」
 
女性「今だけ。今だけこうさせて…」
 
死神「今だけとは言わずいつでもして宜しいですよ?」
 
女性「ううん。…今だけ。今だけ」 

死神「そうですか?」 


女性(M)「これは浮気になるだろうか。バレなければ大丈夫なんて思ってる私はずるいのだろうか」


死神「愛してますよ」 


女性(M)「幸せを感じてる。安心を抱いてる(いだいてる)。ずっとこうしたいと思ってる。私も愛してると…言いそうになる」 


(チャイムが鳴る) 

女性「…こんな時間に誰だろ。ちょっと見てくるね」 

死神「はい」 

(玄関を開ける) 

女性「…まー君」 

彼氏「心配で来た。大丈夫か?」
 
女性「う、うん。大丈夫。わざわざ来てくれてありがとう」
 
彼氏「いや、俺のせいでもあるのかなって思って」 

女性「それは、もう大丈夫だからっ」 

彼氏「寒いからさ、上がってもいい?」
 
女性「え…あ…うん」 

彼氏「ご飯はちゃんと食べた?」 

女性「うん。うどんをね」 


女性(M)「部屋に戻ったら、死神は居なくなってた。ほっとしたような寂しいような複雑な気持ちだった」 


彼氏「そっか」(後ろから抱きしめる
 
女性「どうしたの?」 

彼氏「疲れた」 

女性「うん。お疲れ様」 

彼氏「癒して」 

女性「どうやって?」 

彼氏「キスして」 


女性(M)「私を愛してくれる。必要としてくれる。もっともっと愛して必要として… やっぱり私は愛してくれるなら誰でも良いんだ。 分かってた事だけど。どこまでも汚くて汚れてる。 …ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」 


彼氏「大好きだよ」 

女性「うん。私も」 


死神『醜い魂は醜い魂を呼ぶといいますが…。愛されたい女に、周りの評価が気になる男。女など所詮、自分の飾りに過ぎないですか…。なんて醜く実に歪な素敵な魂』 


死神「ちゃんと愛しますよ。貴女の魂を」
 
女性「死神?」

死神「貴女達の魂、頂きます。 

 

1度に2つ。醜い魂を狩れていい収穫でしたね。 さぁーコレクションの仲間入りです」

 

 

 ─おわり─

・女性【24】愛されたい女
・彼氏【25】チャラいクズ
・死神【不明】イケメン

・女性 ♀:
・死神 ♂:
・彼氏 ♂:

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