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SE:カランコロン
 BGM:ジャズ

ミカ :(鼻歌)
    んー! カジノの空気!! 今日も最高です!
    この、ヒリヒリと体を焼くような感じ……
    たまりません……!
    こんばんは! 今日もよろしくお願いしますね!
    あ、チップの交換は銀貨5枚で
    はい、4500チップ、ども!


ミカ :(鼻歌を歌いながら)
    ふふ。さて、今日はどんなギャンブルをやりましょうか……

ジャス:おぉ、ミカの坊主じゃないか!
    まぁたこんな所に来やがって!!
    オレァお前さんの将来が心配になる!

ミカ :ジャスティンさんこそ!
    負けたら、奥さんにまたどやされますよ!

ジャス:ははは!! ちげぇねぇ!
    こりゃいっちょ気合い入れて賭けねぇとな!
    ……ところでどうだ、今晩はいっちょ、オレと賭けてみないか?
          未だ無敗のミカの実力、そろそろ測らせてもらいたいもんだがな

ミカ :おぉ、それはそれは楽しいギャンブルになりそうです!
    ちなみに、何の卓です?

ジャス:ブラックジャックだ

ミカ :うーん、ブラックジャックですか……

ジャス:どうだい、坊主

ミカ :うーん……
    ごめんなさい! 勝負はまた今度で!

ジャス:おっと、そりゃぁねぇぜ坊主ー!

ミカ :今晩はブラックジャックよりも……、あっち!
    ポーカーの卓が気になるんです!!

ジャス:たはは……、そりゃぁ残念だ

ミカ :ごめんなさい!
    でも、ジャスティンさんとの勝負、今度絶対やりましょう!
    圧倒的な幸運を誇った相手とのギャンブル……
    あぁ、想像しただけでもワクワクします……!

ジャス:お前は相変わらずだなぁ坊主
    身を滅ぼさねぇか、心配になるぜ

ミカ :大丈夫です!!

ジャス:その自信はどっから来るんだよ

ヨハン:あの、失礼
    貴殿は、ジャスティン・グレギオ殿で間違いありませんか

ジャス:ん? あぁ、ジャスティンとは俺のことだが……
    って! 騎士サマじゃねぇか?

ミカ :騎士サマ?

ジャス:あぁ。最近ここに来るようになった新参だ
    オレも顔しか知らねぇがよ、
    どうにも貴族どもから根こそぎ勝利をかっさらってるって話だ

ヨハン:いやぁ、そんな
    貴殿こそ、大勝ちを繰り返していると噂になっていますよ
    ……こちらの方は?

ミカ :ミカ・サスペインです
    騎士様、どうぞよろしくお願いします

ヨハン:おっと、先に名乗りもせずに失礼しました
    私はヨハン・フェイド・ルークイリヤ。ヨハンとお呼びください

ジャス:で? そのヨハン騎士サマがオレに何の用だい
    貴族のところで賭けるような金は持ち合わせちゃいねぇぞ

ヨハン:いえいえ! そんな!
    僕は大金を賭けることより、勝負の空気感が好きなだけですので
    掛け金の上限、キャップは、そちらの設定で構いませんよ
    それに、貴族卓のほうは少し……気疲れしてしまって

ジャス:ははは! あいつらプライドだけはたけぇしな!
    負け始めるとガキみてぇに不機嫌になりやがる!
    そりゃ仕方ねぇな
    よしっ! いいだろう、オレとやるかい?

ヨハン:こちらこそ、喜んで

ジャス:で、坊主はどうするんだい? 見てくか?

ミカ :いえ! 僕はポーカー卓に向かってみます
    がんばってくださいね!

ジャス:あんがとさん
    んじゃ、ディーラーのねぇちゃん、よろしくおねがいしますわ

ヨハン:よろしくおねがいします


 BGM:フェードアウト

 

 BGM:フェードイン


ミカ :さて……、どこかいい人はいないでしょうか?
    ……ん? あんなところに女の子が一人
    しかもなにか周りの方々とは違ったオーラ!
    行ってみましょう!!


ミカ :こんばんは! 向い、よろしいでしょうか?

イザ :……どうぞ

ミカ :ありがとうございます
    んー、あまり見ない顔ですね、もしかして初めてですか?

イザ :初めてではないわ。 あまり来はしないけれど

ミカ :そうですかー。 見たところ、かなりお若いかたで

イザ :あなたにそれを言われるとは思わなかったわね
    おいくつ?

ミカ :12です。 そちらは15歳くらいでしょうか

イザ :18よ

ミカ :おっと、失礼しました

イザ :それで? するの、ギャンブル

ミカ :いいんですか?

イザ :そのために座ったんでしょう?

ミカ :そうですけど……。でもなぁ

イザ :言っとくけど、甘く見てると痛い目見るわよ
    私(わたくし)、お遊びの勝負はしたくないの

ミカ :へぇ……

イザ :やるの? やらないの?

ミカ :いえ、やりましょう! ワクワクしてきました!
    ディーラーさーん? お願いします!

ディ :かしこまりました。勝負は?

ミカ :んーと……

イザ :(食い気味で)テキサス・ホールデムポーカー

ミカ :おぉ、なかなか楽しそうなものを出してきますね!


 BGMカットイン

 


ミカM :テキサス・ホールデムポーカー
    一般的な5枚とも自分の手札で、尚且つ相手に公開しない、
    クローズド・ポーカーと違い、
    自分の手札は2枚だけで、両方に公開される、
    フロップと呼ばれる5枚のカードと組合わせて
    より高い5枚から構成される役を作り競う……
    それがこのゲームですが……

    


ディ :ルールは?

ミカ :親はなしでジョーカー1枚のワンデッキゲーム
    金額上限は4500チップでどうです?

イザ :いいでしょう

ミカ :最初に払う参加費、アンティは50チップ
    ベットのリミットは無しのテーブルスクーテス、
    要するに手持ち以上はかけられませんが、いかがですか?

イザ :問題ないわ

ミカ :そして最後に。大事なルールを提案します
    ショーダウンになったとき、5カードは片方の賭け金の5倍
    ロイヤル・ストレート・フラッシュは2倍になる、
    というのはいかがでしょう?

イザ :聞いたこともない特殊ルールね

ミカ :テキサス・ホールデムポーカーはクローズド・ポーカーに比べ、
    高い手が出やすいです
    だからこそ、賭け金が跳ね上がるルールがあったほうが、
    緊張感が高まって面白いでしょう?

イザ :……確かにね。 なら、そのルール受けましょう

ミカ :では、それで合意ということで

ディ :かしこまりました
    当カジノの規定通り、アンティは徴収となりますが、
    両者よろしいですね?
    ……それでは、ゲームを始めます!


 SE:カードをシャッフルする音
 BGM:カットイン


ディ :まずは、ベットコールする順番を決めます
    お互い1枚づつカードを配り、
    数字が高いほうが先にコールする権利を得ます
    同じ数字の場合は、
    スートがスペード、ハート、ダイヤ、クローバーの順で
    強いものとします


 SE:カードが配られる音


ディ :オープン!

ミカ :ハートの9

イザ :クローバーの2

ミカ :やりました! 幸先良いですね!!

イザ :……

ディ :双方、そのカードを切ってください
    ファーストゲーム!


 SE:カードが配られる音

 


ミカM :さて、手札が2枚配られましたが……

ディ :プリフロップ! 

ミカ :はい、まずはアンティ50枚ベットです

イザ :ベット

ミカ :あ、そういえば、自己紹介がまだでした
    僕、ミカって言います。 ミカ・サスペインです。レイズ50枚

イザM :いきなりレイズ……?
    何か策があるのか、ジョーカーを引いたか、
    それとも……

イザ :イザよ。それ以上名乗るつもりはないわ。コール

ミカ :じゃぁ、イザさんってよばせていただきますね!

ディ :では、フロップを出します


 SE:カードが配られる音

 


ミカM :クローバーの3とA、ハートの3ですか……

 


イザM :これでワンペアは確定
    一番でかい役は今のところ3のフォーカード

 


ミカ :ふふ、どんどん行きましょう、レイズ50です

イザ :……50レイズ

 


ミカM :あげてきましたか

 


ミカ :レイズです。50チップ

イザ :……コール

 


イザM :これで双方賭け金は200……!

 


ミカ :のってきますね! 次行きましょう!

ディ :フロップオープン!

 


イザM :出たのはダイヤのJか

 


ミカ :……チェック

イザ :チェック


ディ :ラストオープン!


イザ :ハートの6……


ミカ :レイズ。200チップ

イザ :……!?

 


イザM :200のレイズ!?
    相手を降ろさせる狙い?
    いや、ブラフの可能性もある……

 


ミカ :どうします?

イザ :……

 


イザM :……私の手札はダイヤの3とスペードの2
    あまり強い手とは言えないけれど
    でも、相手がラストの3を持っている可能性は低い
    注意すべきは、
    ジョーカーとどれかが揃った手札のフルハウス……
    とはいえ、最初にジョーカーが手札に来る確率は高くない
    少し様子をみてみるべきね……

 


イザ :レイズよ。100チップ

ミカ :レイズ。500チップ

 


イザM :なっ? 賭け金1000枚?
    この子、正気……?
    それで負けたら賭け金の4分の1を失うのよ?
    やっぱり、初手でジョーカーを持っていた?
    それは考えにくい。初手にジョーカーが来る確率は約3%……
    もしかして、6、J、Aのどれかを2枚持っている?
    いや、それも低い。
    この状況下で急激なチップのつり上げ……
    降りてくださいと言ってるようなもの!
    で、あるならば……!!

 


イザ :私は! コー……

ミカ :ふっ

 


イザM :……っ!? 笑った?
    ……いやいや、冷静になるの、クリスティ・フリート・イザベリア!!
    ここで負けでもして1000チップ失えば、大きな痛手!
    そもそも、彼はラストオープンまではちまちまとしたレイズだった!
    私が乗ることを確認して、大幅レイズした可能性もある!
    そうよ、相手はこちらがいい手だとした上でも
    なお勝てる手だとしたら、無理なレイズにも納得がいく!
    もともといい手であれば、私が乗ろうが降りようが
    あちらが侵すリスクはゼロ……!
    なら、ここは敗北してでも無理な勝負は避けるのが無難!

 


イザ :……フォールドするわ

ミカ :いいんですか?

イザ :えぇ

ミカ :……ごちそうさまです
    こんな手札で勝ててラッキーです

イザ :な、なによ、この手札……

ミカ :ダイヤの4とスペードの8です
    3のワンペアですね。えへへ……

イザ :実質ブタみたいなもんじゃない!
    よくそんな手で1000も!!

ミカ :いやいや、イザさんが深読みしてくれたおかげです
     内心はひやひやものでしたよ!

イザ :……


イザM :よくもぬけぬけと……!
    今回のゲーム、私は完全に策にはめられた
    チャンスに踏み込む意思を折られ、ミスリードに誘われてしまった
    ……いやでもとりあえずは、“そんなことはどうでもいい”
    むしろ500の被害で済ませることができてよかったと思うべき
    問題は。“なぜ、手札を私に見せたのか”
    私はフォールドしたのだから、手札は公開せずそのまま流すのが鉄則……!
    なのに、なぜ公開した……?
    さり気無くやっていたから、
    普通ならそのまま勝負の余韻に呑まれて気づかないでしょうけど……
    あの行為、絶対に何かある!!


ディ :次のゲームに移ります!


 SE:カードが配られる音


ディ :プリフロップ!

イザ :今度は私が先ね
    とりあえず、ベット

ミカ :ベットです

 


イザM :さて……、再びお手並み拝見といこうかしら
    私の手札はダイヤの2とクローバーのK
    まだ動くには早すぎるわね

 


イザ :チェック

ミカ :僕もチェックです


ディ :フロップを出します


 SE:カードが配られる音

 


ミカM :スペードの3、クローバーの7、ハートのK

 


イザM :みごとにバラバラ……

 


イザ :レイズ! 50チップ

 


ミカM :ふむ。このフロップで動きますか

 

イザM :Kはまだ見えていないカード
    相手に行っていなければ、まだ残り2枚ある
    2は私が2枚引いているから、残り一枚で分が悪いけれど、
    Kが重なれば勝機は十分!
    フロップの3はこれがラストのカードだから、ないものとして
    考えてもいいとして、問題は初めて見えた7……
    さて、相手がどう出るか

    


ミカ :50レイズです

イザ :さらに50レイズ

ミカ :……コール


イザ :賭け金200でストップ。ここまでは前回と同じ流れね


ディ :フロップオープン!

 


ミカM :ハートの2

 


イザM :きた!! これはうれしい当たりね!
    2はこれで最後だから、次のフロップがKならフルハウス!
    賭け方から見るに、相手は7かKのどちらかを持っているとみて
    間違いなさそうね
    200でコールしたところを見ると、どちらも持っていたり、
    ジョーカーを持っていたりは考えにくいけれど……
    まだ油断はできないわ

 


イザ :レイズよ。 50チップ

ミカ :……。50、レイズです

イザ :さらに50レイズ

ミカ :……コール


ディ :ラストオープンです

 


イザM :クローバーの10……
    フルハウスならず、か。それでもこのツーペアなら上出来だけれど
    さっきのベットラウンドを見るに、Kを持っている可能性は低い
    気になるのは、ここにきて初めて見えた10。この子が厄介ね
    相手が2枚持っている可能性も捨てきれない
    10の3カードか、7と10のツーペアかもしくはそれ以下か……

 


イザ :50レイズよ

ミカ :同じく50レイズです

イザ :レイズ。100チップ

ミカ :……

 


イザM :沈黙。いよいよ、10の3カードの線は薄くなってきたわね
    十中八九、7と10のツーペアで間違いないでしょう
    このゲーム、勝たせてもらうわ

 


ミカ :……ふふっ、楽しい、楽しいですよ、イザさん

イザ :……?

ミカ :なかなかに、なかなかに素晴らしいです
    レイズ!! 150!


(ざわめき)


イザ :ふっ。100、レイズ

イザM :強気に張ってもらっているところ悪いけれど、
    今の私の手札と、予想できるあなたの手札……
    引く理由が全く存在しないわ

 


ミカ :200チップ、レイズ!!

 


イザM :1000、か
    万が一あっちにジョーカー、もしくはKが7が二枚揃っての3カードで
    過剰なレイズをしているのならば、
    このゲーム、私の負けは仕方ない……!
    だけど! 私の読みが正しければ、この勝負、勝てる!!
    ここで引いて悔いを残すか、さらに高みを目指すのか
    それとも……

 


イザ :コール!

 


イザM :それとも、自分を信じ、運を信じたうえで、
    相手の煽りに乗らず確実に勝利し流れを変えるのか!!
    答えは明確! 私は勝つわ!!


(間)


ミカ :……すばらしい

ディ :それでは、ショーダウンです!!

イザ :Kと2の2ペアよ!!

ミカ :ハートの10とクローバーの7。2ペアです

ディ :……ウィナー! イザ!!


(歓声)

 


イザM :読み切った……! 
    とりあえず、これでさっきの借りは返したわ……

 


ミカ :さてさて、ちょうど手持ちの差は1000チップ
    面白くなってまいりました!
    次はどんな手になるんでしょうかね!

 


イザM :1000チップも飛んだっていうのになんなのこいつ……!
    まるで動じてないじゃない!

 


ディ :それでは、次のゲームです!


 SE:カードが配られる音


ディ :プリフロップ!

 


ミカM :ハートの8とクローバーの6……
    先ほどは大きく負けてしまいましたからね、ここは慎重に

 


ミカ :アンティをベットして、僕はチェックです

イザ :私もアンティベット。チェックよ

ディ :フロップを出します


 SE:カードが配られる音

 


ミカM :ハートのQ、クローバーの8とJですか
    現時点でワンペア確定
    1ゲーム目にスペードの8とハートの6が出ましたから、
    残りはダイヤの8と、スペード・ダイヤの6
    裏向きのフロップが2枚ともクローバーならフラッシュで、
    6ならフルハウス……。が、どちらも難しそうですね
    それに、このフロップなら……
    困りましたね

 


ミカ :チェックです

イザ :あら、今度は消極的なのね
    私は攻めさせてもらうわ。100、レイズ

ミカ :コールです

ディ :フロップオープン!

 


ミカM :ダイヤの8!
    フロップだけでかんがえるなら、
    フルハウスも考えられるし、まだフラッシュも捨てきれない
    と、なりますが、あちらはおそらく……

 


ミカ :レイズ、50チップ

イザ :さらにレイズよ。100枚

ミカ :ふむ、それでコールです

ディ :ラストオープン!!

 


ミカM :クローバーの5……
    これで、僕の手札は3カード確定ですね

 


ミカ :ふむふむ、僕はチェックで


イザ :100レイズよ

ミカ :……。ゲームを開始した時から思っていましたが、
    イザさん、とても優雅な所作をされますね
    50レイズ

イザ :100レイズ

ミカ :身に沁みついた所作は、
    たとえ取り繕っていても動作の端々に現れるといいます
    50レイズ

イザ :……煽っているつもり? 200レイズよ

ミカ :いえいえ。感動しただけですよ
    高貴な方、それも麗しい方のお相手は、
    それだけでドキドキしますからね
    レイズ。100チップ

イザ :それはどうも。100チップ

ミカ :あはは。これで負ければ僕はかなり苦しくなりますね
    とはいえ、降りるのも芸がないです。コールで

ディ :それでは、ショーダウンです!

ミカ :8のスリーカードです

イザ :ダイヤの10とクローバーの9、ストレートよ


(歓声)


ミカ :あっりゃー、負けちゃいました!
    これでいよいよ、動きずらくなりました
    目の前の敗北! その緊張感を背負いながらのギャンブル!!
    これぞ賭けです!!

イザ :……。あなた、典型的なギャンブル狂ね

ミカ :それは僕にとって誉め言葉ですよ!
    さぁ、次のゲームに行きましょう!!

イザ :いいの? 残り2ゲーム、あなたの勝利はないと思うのだけれど
    残りのゲームをすべて降りれば、それだけで私の勝ち
    あなたと戦うリスクを負う必要はないわ

ミカ :あはは、そんなつまらない勝負、あなたがするわけはない、
    と、僕は読んでいるんですけれど

イザ :買いかぶりすぎかもしれないわ

ミカ :そんなことないと思いますよ
    勝利が見えれば後は逃げの一手なんて、
   “  王族のすること”とは到底思えないもので

イザ :……。あなた、いい根性しているわ
    いいでしょう、残り2ゲーム、徹底的に叩き潰してあげるわ
    ディーラー、次のゲームよ

ディ :かしこまりました
    それでは、次のゲーム!


 SE:カードが配られる音


ディ :プリフロップ!

 


イザM :はは……、ははは……!
    これはこれは、今日は相当ツイているみたいね、私
    まぁ、フロップ次第ではあるけれど

 


ミカM :これはなかなか……。確率は高いが、なんとも言えない手札ですね

イザ :ベット。チェックよ

ミカ :ベットです。同じくチェックですね

ディ :フロップ、オープン!!

 


ミカM :スペードの4とQ、ダイヤの7か
    フロップ次第でフラッシュが見えますが……

 


イザ :レイズ。200チップ

 


ミカM :まぁ、そうでしょうね
    またいい手札引いたのでしょう
    なら、相手に合わせず、賭け金を吊り上げればいい
    それだけで、僕には相当な威圧になりますからね
    とはいえ!

 


ミカ :コールです

 


イザM :降りない……? まぁ、どうでもいいわ
    この手札で負けはない。このまま上げ続けるのみよ

 


ディ :フロップオープン!

 


イザM :ハートの4! きた!! これで私の勝ちは確定!

 


イザ :レイズ! 100チップよ!

ミカ :コールです!

ディ :ラストオープンです!

 


イザM :スペードの5、か

 


イザ :100チップ、レイズ!

ミカ :コールです

ディ :それでは、ショーダウンです!

ミカ :スペードの6と9! フラッシュです!!

イザ :なるほど。しっかりとスペードつかんでいたようね
    なかなかに高い役じゃない
    ……でも
    ……頑張ったようだけれど。まだ足りない


 SE:カードの音


イザ :Qが3枚、4が二枚のフルハウス、よ

ミカ :……


(歓声)


イザ :さて? 今、あなたの持っているチップは2450枚
    私の持っているチップは6150枚
    そして、次が最後のゲームになりそうね……
    どうするの? まだこの茶番を続ける気?

ミカ :ええ。続けましょう
    次のゲームで、勝つにしろ負けるにしろ中途半端で終わらせるのだけは
    おもしろくありませんからね

イザ :……ふん、まだ勝ちを目指しているの?
    いいでしょう、あなたのそのギャンブル精神に免じて、
    最後まで付き合ってやるわ。ディーラー

ディ :かしこまりました
    それでは!! ラストゲーム、スタートします!!


 SE:カードが配られる音


イザ :……

ミカ :……

 


ミカM :これが、泣いても笑っても最後のゲーム

 


イザM :勝負は見えているけれど……
    あなたの無敗の最期、しかと見届けてやるわ

 


ディ :プリフロップ!

ミカ :ベット。チェック

イザ :あらあら、弱気なのね。私は全然それでもいいのだけれど
    ベット、チェック

ディ :ラストゲーム! フロップ! オープン!!


 SE:カードをめくる音

 


ミカM :一枚目、ハートの5……

 


 SE:カードをめくる音

 


イザM:二枚目! スペードのA

 


イザ :……


 SE:カードをめくる音

 


ミカM :三枚目……。……っ!! これは……!!

 


イザ :JORKER……!


(間)


ミカ :……

イザ :……

ディ :プレーヤー・ミカ。ベットラウンドです

ミカ :……チェック

イザ :……

ディ :……プレイヤー・イザ? ベットラウンドです


(間)


イザ :(含み笑いから、徐々に高笑いへ)
    つくづく、つくづくついてないわね、あなた!!
    いや、この場合、私がついているということなのかしら!!
                ええ、ええ! いいでしょう、ミカ・サスペイン!
    私が! この私が!! あなたに引導を渡してやりましょう!


 SE:ジャラジャラとしたコインの音


イザ :レイズよ! チップ、6000枚!!


(ざわめき)


ミカ :……本当に、よろしいので?

イザ :えぇ。いいわ。もちろんよ。寒い煽りはやめて
    いい? 悪いことは言わないわ。
    ――このゲーム、降りなさい
    これはもう、ブラフでも何でもない
    今までのゲーム、たまたま私に運が回ったのでしょう、
    いい手札に恵まれたわ。その中であなたはよく戦った
    だから純粋に、あなたのギャンブラーとしての力量、評価するわ
    半分近くまでチップが減ってしまったけれど、
    あなたならその元手で、別のギャンブルで、また勝てる

ミカ :……これはこれは。“どうも、ありがとうございます”
    ――ではイザさん。最後に。良ければ教えてもらえませんか
    あなたは、今までのゲームで出たカード、そのすべてを記憶したうえで
    残りのカードから僕の手札、そして裏向きのフロップを推測していましたね?

イザ :……えぇ、そうよ。何故ばれたのかしら

ミカ :賭け方です。確信を得たかのようなレイズもありましたし
    そして、今回も、そうして、勝ちを確信しているわけですね?

イザ :そうよ。 だからもう一度言うわ
    よく聞きなさい。これが最後の警告よ
    ――降りなさい
    それがあなたのためよ

ミカ :……わかりました
    イザさん。いろいろと教えていただき、ありがとうございました
    僕も、久々に楽しいギャンブルをすることができました
    だからこそ、僕も敬意をもって返答しましょう
    その申し出――


ミカ :絶対に、お断りします♪


イザ :――えっ?


 SE:ジャラジャラと、コインの音


ミカ :コール。2400チップ、オールインです


イザ :なっ……!!

ミカ :さぁさぁっ!! それでは! ディーラーさん!
    残りのフロップ2枚、お願いします!!

イザ :あ、あなたって人は……!

ディ :それでは、フロップ、オープンです!!

ミカ :さぁっ!! 運命を決めるラストカード!
    残りの2枚ですべてが決します!
    運命の女神は! どちらに微笑むのでしょうか!!
    これが!! これが最後の! ショーダウンですっ!!


 SE:カードがめくれる音


ミカ :ダイヤの9……!


 SE:カードがめくれる音


イザ :スペードのJ……!
    ジョーカー以外見事にバラバラじゃない!

ディ :それでは!! ラストゲーム! ショー! ダウンです!!

イザ :……本当に。本当にあなたには失望したわ……!
    いいでしょう、お望み通り、私があなたに引導を渡す!
    私の手札は!!


 SE:机をたたく音


イザ :ハートとダイヤのA!! Aのフォーカードよっ!!
    さぁ! あなたの手札! オープンしなさい!!

ミカ :いろいろと教えていただいたお礼に、僕からも一つ、アドバイスを
    ――最後まで、油断はだめですよ、イザさん?


 SE:カードがめくれる音


イザM :スペードのKと10……!! ま、まさか、これって……!!


イザ :嘘……

ミカ :スペードのA、ジョーカーをスペードのQに。そして、K、J、10……

イザ :そんな……

ミカ :規定ルールにより、ロイヤル・ストレート・フラッシュのベットは2倍……!
    よって4900チップの支払いです。僕の勝ちですね、イザさん

イザ :あ、あなた……

ミカ :“ごちそうさまです”。イザさん


(歓声)


イザ :そんな……。あそこでJが来る確率は12分の1……!
    確率なら10%もない……!
    なんでそんな手に全額賭けられるのよ!

ミカ :10回やれば1回は当たるか当たらないか
    外せば名声も失い無一文、勝てば大逆転勝利!
    まさしくハイリスクハイリターンってやつですね!
    いやぁ……! この進退窮まった切迫感!!
    これこそ、ギャンブルですよ!!

イザ :あ、あなたは……、本当に……

ミカ :さてさて!! 首尾よく勝利したということで!
    これでジャスティンさんに堂々と顔向けできるというものです!
    あちらはどうなっているでしょうかー!
    (鼻歌を歌いながら去る)


 SE:足音


ミカ :(鼻歌)
    じゃっすてぃーんさーん!
    そちらはどうですかー! こっちはとてもとても、いいギャンブルが――


ヨハン:ナチュラルブラックジャックのベットは2.5倍……
    私の勝ちですね

ジャス:くそ……っ!!
    まだ、まだだ……!

ヨハン:掛け金を追加されるんですか……?
    このカジノで、それでも負ければ、どうなるか知らないわけではないでしょう

ジャス:ぐ……。オレの、負けだ……

ヨハン:はい、それが賢明です

ミカ :豪運をお持ちのジャスティンさんが、ブラックジャックで負けた……?
    それに……、最後の勝ち方……。まさか……

ヨハン:それでは、僕はここで

ミカ :待ってください!

ヨハン:……?

ミカ :次は、僕とギャンブルしましょうよ

 


ミカ :ヨハン・フェイド・ルークイリヤさん?
 

 

役決め表

・ミカ (♂)(不問):
・イザ (♀):
・ヨハン(♂):
・ジャス(♂):
・ディーラー(ディ)(♀)(不問):

あらすじ:ここは、とある街の裏カジノ――。
賭ける金さえあれば、老若男女、身分問わず入場できるそこに訪れた、一人の少年。
暮らしを彩るささやかなお遊びから、巨額のチップが動く大博打まで、様々な欲が蠢くその魔窟で、彼はどのようなギャンブルを行うのか。
どうやら、今夜は。常ならざる一夜になりそうである。

名前:ミカ・サスペイン(♂)(不問)

年齢:12歳
性別:男性
一見は明るく素直な性格の少年。
しかし、ギャンブルに関しては貪欲なまでの執着心がある。
人並外れたコールドリーディングの技術を持ち、幾重にもトリックを盛り込んだ、戦略的なギャンブルを得意とする。
ゲームトータルでの総合できな勝ち負けでは、ほぼ無敗。

・イザ(♀)
名前:クリスティ・フリート・イザベリア
年齢:18歳
性別:女性
お忍びでやってきた帝国第6王女。
カジノ内では身バレ防止のため、イザと名乗る。
洞察力や知性も富み、ギャンブルの腕もそこそこである。
大きな負けも大きな勝ちもなく、といった様子。
帝国の王宮内で起こる激しい覇権争や派閥争いにも負けない強いメンタルを持つ。
堅実的なギャンブルを得意とする一方で、時には情熱的な賭けにも出る。

・ヨハン(♂)
名前:ヨハン・フェイド・ルークイリヤ
年齢:20歳
性別:男性
帝国騎士。さわやかな笑顔が素敵なイケメン騎士。
性格もそれと同様、清廉潔白な人物。
賭け事そのものよりも、相手の心理トリック等を読み、勝利する事が好きで、ギャンブルをしている。
その趣味趣向もあってか、相手の心理を読む力、観察力、洞察力、記憶力と、かなり幅広い分野で人並外れた強さを誇る。

・ジャス(♂)
名前:ジャスティン・グレギオ
年齢:47歳
性別:男性
街王手の鍛冶屋職人。妻子持ちで、豪傑漢。
人望も厚く、気前もいいが、酒癖が少しよろしくない。
駆け引きはそこそこだが、幸運だけで勝利をもぎ取るラッキーメーカー。
そのため勝率もかなり高い。
当カジノの古くからの常連。
とはいえ、酒の肴にギャンブルを程よく楽しむ程度なので、生粋のギャンブラーというわけではない。

・ディ1(♀)(不問)
名前:(不明)
年齢:20代?
性別:女性(又は男性)
女性のディーラー。
この裏カジノ自体が、ギャンブル以外での客との接点が一切ないため、ディーラー一人の素性についても謎。
円滑なゲームの進行とイカサマ防止に従事している。

 

登場人物

​作者:さもえどさん

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