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Ogre Game(読み方:オウガゲーム 訳:鬼ごっこ)

​作者:銀狼

登場人物

あらすじ:目を覚ますと見知らぬ所にいて、見知らぬ人がいた。勝てば賞金がもらえるゲームが始まる──

《コンクリート壁しかない部屋にて》

健太「……ん……んー……」

直斗「ここは何処なんだよ!! 出せ!!」

奈々「あ、健ちゃん。やっと目を覚ましたんだ。良かった……」

健太「……奈々?」

由夢「おはよう。お寝坊さん」

直斗「あぁ?やっと目を覚ましたか。おい! ここは何処だ!!」

健太「……え……ここ何処」

直斗「(舌打ち)どうなってんだよ!!」

由夢「簡単に説明するとね、ここに居る私達は目が覚めたらここで寝てたの」

健太「すみません。ちょっと混乱しすぎて状況が……」

奈々「健ちゃん。怖いよ」

健太「奈々も気が付いたらここに?」

奈々「うん……」

直斗「クソッ!!」

由夢「一度、落ち着いたらどうなの?」

直斗「この状況で落ち着ける訳ないだろ!!」

健太「記憶がない……いつ寝たんだろ」

奈々「やっぱり、みんなここで目を覚ます前の記憶ないんだ……」

健太「……携帯?」

由夢「みんな、ポケットに見覚えのない携帯が入ってるわ。圏外になってるから、使い物にはならないけど」

直斗「イライラする……タバコ吸いてぇ……」

由夢「とりあえず、自己紹介しましょ。お互い初対面な訳だし。私の名前は佐藤由夢、OLよ」

健太「じゃぁ……次は僕が。森下健太、大学生です」

奈々「田中奈々です。大学生です」

直斗「高橋直斗。フリーター」

由夢「健太君に奈々ちゃん、直斗ね」

直斗「なんで俺だけ呼び捨てなんだよ!!」

由夢「覚えたわ。私も由夢でいいわ」

健太「分かりました」

奈々「由夢さんですね」

直斗「俺のことは無視かよ。喧嘩売ってんのか?」


GM『あーあーマイクテスト、マイクテスト』


直斗「なんだ!?」


GM『(咳払い)紳士淑女の皆様!! 今宵も楽しい時間がやってきました!!』


 SE:拍手


GM『本日は私(わたくし)ジョーカーがゲーム進行をさせて頂きます。さぁ!! 元気な子羊達がお目覚めになっているようです。今宵も楽しくゲームを致しましょう!!』


健太「一体何が……」

奈々「怖い……健ちゃん」

健太「大丈夫。僕がいるから」

直斗「どっから聞こえてきやがる!!」

由夢「どこかにスピーカーでも埋め込まれてるのね」


GM『おやおや、子羊達の中に子犬が一匹紛れ込んでるようだな』


直斗「あぁ!?」


GM『こんばんわ。子羊達と子犬よ。お前達には今宵の見世物となってもらう』


由夢「見世物?」

直斗「おい!! 声聞こえてんのか!?」


GM『そう! 退屈な日常に飽き飽きの紳士淑女の皆様が見物をされている! 満足すれば閲覧料を払って下さるシステムだ』


健太「い、今も見られてる……?」


GM『ではゲーム説明に入ろうか!!』


直斗「いや!! ふざけんなよ!! 訳が分からねぇ!!」

由夢「一回落ち着きなさい。とりあえず説明を聞きましょ」


GM『そうですよ? 短気は損だ。健康な体に悪い』


直斗「うるせぇ!! 何処に居やがる!! 一発殴ってやる!!」

健太「一回落ち着いて下さい」


GM『ルールは簡単。お前達には迷路に入ってもらいゴールを目指してもらう。だが、ただゴールを目指す訳ではない。迷路には鬼が潜んでいる。鬼から逃げ切りながらゴールを目指してもらう』


奈々「鬼ごっこ……?」


GM『簡単に言えばそう、鬼ごっこだ。お前達が逃げ切れば賞金が貰える』


直斗「賞金だぁ?」

由夢「賞金って何」


GM『紳士淑女の皆様が払った閲覧料がお前達の賞金となる』


由夢「捕まったらどうなるの?」


GM『捕まったら迷路から退場。賞金はない』


健太「僕達全員が捕まったらどうなるんですか?」


GM『賞金は鬼である私達のものとなる』


直斗「今これを見てる奴らが金払うんだよな? 払う奴なんていんのか?」


GM『紳士淑女の皆様は退屈されている。日常に飽きられてるのだ! 刺激を求めている!! これを閲覧されている紳士淑女の皆様は、自分の欲求が満たされるのであればいくらでも閲覧料を払うのですよ。 だから、賞金はどれほど楽しませれるかで変わってくる』


由夢「ねぇ、ゴールは誰でも良いの? それとも全員でゴールしないといけないの?」


GM『四人の中で誰かがゴールすればお前達の勝利となる』


奈々「けど、捕まれば勝っても賞金は貰えない……」

直斗「賞金は残ったやつで山分けか?」


GM『そうだ』


健太「鬼は追いかけて来るんですよね……?」


GM『鬼ごっこなのだから当たり前だ。死ぬ気で逃げ切ることを勧めるよ。賞金が貰えるのだから』


由夢「拒否権は?」


GM『ない。ゲームに参加しなければここから出ることすら出来ない』


直斗「ゴール目指せばいいんだろ。やってやるよ!」

由夢「拒否権は無いみたいだから、やるしかないわね」

奈々「健ちゃん」

健太「うん。僕たちもやるしかないね」


GM『潔くてよろしい。ひとつ言い忘れていたが、それぞれに携帯が渡されていると思う』


健太「これですか?」


GM『そうだ』


由夢「渡されたと言うよりポケットに入っていたわ」


GM『細かい女は嫌われるぞ?』


由夢「適当な男はどうかと思うけど?」


GM『説明に戻る。その携帯にはお前達の電話番号が登録されている。迷路の中で携帯で連絡し情報交換などに使っていい』


健太「けど、圏外になってます」


GM『携帯に登録されている電話番号には繋がるようになっている』


 SE:着信音


奈々「健ちゃん。繋がった」

直斗「嘘じゃねぇみたいだな」


GM『では、ゲームを始めるぞ』


奈々「か、壁が……」

健太「通路だ」


GM『通路は二つ。一歩踏み出せばもう迷路だ』


由夢「こんなの映画でしか見たことないわ。壁が動いて、通路が現れるなんて。相当お金が掛かってそうね」


GM『ゲームを楽しんで貰うためなら、こんなの安い出費だ』


由夢「二手に分かれて迷路に入りましょうか」

健太「そうですね」

直斗「めんどくせぇ。俺一人でいい」

由夢「ちょっと待ちなさいよ」


GM『大事なことを言い忘れていたが、ペアは先に私がくじで決めておいた』


直斗「はぁ!?」


GM『一組目は森下健太さんと佐藤由夢さん。二組目は田中奈々さんと高橋直斗さん。このペアで迷路に入ってもらう』


奈々「そ、そんな!」

健太「それは絶対ですか?」


GM『絶対だ』


由夢「仕方がないわね。行きましょ健太君」

健太「あ……はい」

直斗「クッソ。遅れんなよ!」

奈々「は、はい……」

 

<健太・由夢サイド>

由夢「すごいわね。なんて高い天井。けど、上まで壁があるから、二人の声が聞こえる事はないわね」

健太「とりあえず進みますか?」

由夢「そうね。分かれ道では壁に印でも付けときましょうか」

健太「どうやって印を付けるんですか?」

由夢「こんだけ綺麗なコンクリートの壁だと、軽く引っかけば印代わりになるわ」

健太「あ、ほんとだ」

由夢「迷路って同じ道を通ったりするから、少しでも早くゴールを見つけるためにね」

健太「由夢さんが一緒で良かったです。ほんと心強い」

由夢「ありがとう。奈々ちゃん達にも一応印を付けるよう伝えておきましょうか。奈々ちゃん達と同じ道を通ったのが分かるし」

健太「あ、僕が電話しましょうか?」

由夢「お願いするわ」

 SE:呼び出し音

奈々『……健ちゃん?』

健太「あ、奈々?」

奈々『うん。どうしたの?』

健太「分かれ道で壁に印を付けて欲しいんだ。こっちも印を付けてるから、通ったのが分かるように」

奈々『印?』

健太「爪でひっかけば印が付けられると思う」

奈々『分かった』

健太「……奈々。絶対ゴールしような」

奈々『……うん』

健太「じゃぁ切るね」

奈々『健ちゃん』

健太「どうした?」

奈々『……どうしても声が聞きたくなったら時、掛けてもいい?』

健太「うん。いつでも掛けてきて」

直斗『いつまで電話してんだ!! さっさとしろ!!』

奈々『それじゃぁ……』

 SE:不通音

由夢「健太君と奈々ちゃんって顔見知りなのよね?」

健太「はい。奈々とは幼馴染なんです」

由夢「良いわねぇえ……私にもそういう幼馴染とか欲しかったわ」

健太「けど、会ったのは久しぶりなんです」

由夢「こんな所で久しぶりだなんて災難ね」

健太「とりあえずゴールしたらゆっくり話したいと思います」

由夢「若いって羨ましわね。私も昔に戻りたいわ」

 SE:足音

健太「鬼!?」

由夢「逃げるわよ!!」

 

<奈々・直斗サイド>

直斗「ゴールはどこだよ。くそっ」

奈々「……」

直斗「なぁお前」

奈々「は、はい……」

直斗「そんな怯えられるとさ、うぜぇんだけど」

奈々「ご、ごめんなさい……」

直斗「うぜぇ……」

奈々「ごめんなさい」

直斗「お前さ、金に困ってんのか?」

奈々「え……」

直斗「困ってるかどうか聞いてんだよ」

奈々「あ……えっと……親が借金を……」

直斗「へぇ……俺には一人、妹がいる。難病で苦しんでるんだ。親はいねぇから俺が治療費を払うしかねぇ」

奈々「妹さんが……そうなんですね」

直斗「だから、ぜってぇにゴールして賞金を手に入れなくちゃいけねぇ」

奈々「意外と……お優しいんですね」

直斗「あぁ?」

奈々「ごめんなさい」

直斗「……お前が妹に似てるから、余計焦る。くそっ」

奈々「高橋さん……」

直斗「分かれ道か。お前はあっち行け。俺はこっち行く」

奈々「え……」

直斗「一緒に探すより分かれた方が良いだろうが」

奈々「分かりました」

直斗「んじゃ」

奈々「……健ちゃん」

直斗「……わりぃな(ボソッ」

奈々「え? うっ……く、くる……しぃ……」

直斗「少しでも金がいるんだ。山分けなんてしてられねぇ! それに…見てる奴らを楽しませなくちゃ、金はねぇんだろ? 妹が待ってんだ。妹のためならなんでもしてやる!!」

奈々「健……ちゃ……ん……ご……めんね」

 

〈健太・由夢サイド〉

由夢「はぁはぁ……、健太君! あの分かれ道で分かれるわよ!」

健太「は、はい!!」

由夢「さぁ……ここからは運ってとこね!」

 

由夢「はぁはぁ……足音は聞こえないわね。健太君の方に行ったのかしら。運は私に味方してるってことね。健太君には悪いけど、そのまま鬼を引きつけておいて頂戴。私はゴールを…」

GM「知ってましたか。鬼は自由に迷路の中を動き回れるんですよ」

由夢「い、いや…いや!!……ぎゃああああああああああああ」

GM「捕まえた」

 

健太「ゆ、由夢さんの声……? 早くゴールしないと」

 SE:着信音

健太「ゆ、由夢さんから?……もしもし」

GM『あ、健太君? ごめんなさい。私、捕まってしまったわ……』

健太「ジョ、ジョーカ」

GM『ふふ……早くゴールを見つけないと捕まるぞ?』

 SE:不通音

健太「……ゴール。ゴールはどこなんだ。早く早く早く」

 SE:着信音

健太「!? ……奈々?」

奈々『健ちゃん健ちゃん健ちゃん……助けて。助けて。もう私……駄目……』

健太「ど、どうした!? 直斗さんは!?」

奈々『鬼が……鬼が……』

健太「っ! 奈々どこにいるんだ!!」

奈々『健ちゃん……どこ……もう怖いよ……』

健太「どこだ……どこだ」

奈々『健ちゃんの声……健ちゃん!』

 SE:不通音

健太「え……奈々、どこに」

奈々「健ちゃん!!」

健太「奈々!!」

奈々「健ちゃん……健ちゃん……」

健太「良かった。大丈夫か?」

奈々「……うん」

健太「とりあえず、ここで立ち止まってられない」

奈々「……うん」

健太「ゴールはどこなんだ。分かれ道多すぎて、どれを行けば分かんない」

奈々「……こっち」

健太「え?」

奈々「こっちから風をかすかに感じる気がする……」

健太「もしかしてゴールに近づいてる?」

奈々「分かんないけど…早く終わらせよ……?」

健太「うん。行こう」

奈々「……」

健太「……」

SE:足音

健太「鬼が来てる!」

奈々「健ちゃん次こっちだと思う」

健太「分かった! 走るよ」

奈々「うん」

健太「はぁはぁ……少し明るくなってきた!!」

奈々「はぁ……はぁ……うん」

健太「見えた! ゴールだ!!」

奈々「……うん。良かった」

健太「僕達の勝利だ! ほら、行こ!」

奈々「やったね」

健太「ゴールは目の前……ん? 止まってどうしたの」

奈々「ごめんなさい。ごめんなさい」

健太「奈々? どうした? ゴールは目の前だよ?」

GM「奈々さん。何をしてる?」

健太「ジョーカー!? 奈々早く!!」

奈々「私に…健ちゃんを捕まえるなんて、出来ない」

GM「本当によろしいのだな?」

奈々「健ちゃん。ごめんなさいっ(健太を突き放す」

健太「んあ!? 痛っ! はっ! 奈々!? 通路が!! 待て!! ……血? え……奈々? 奈々!?」


GM『紳士淑女の皆様! 勝敗が決まりました!! おめでとう。森下健太さん』


健太「奈々は!? どういう事なんですか!! 奈々がまだ中に!!」


GM『まだ気付いてないんですか? 田中奈々さんはこちら側の鬼だったんですよ。しかし、健太さんを捕まえることが出来なかった。敵に情を持てばそこで役目は終わり。まぁ仕方がない。展開としては面白かったので良しとしましょう』


健太「奈々は……」


GM『森下健太さんへの賞金は……ほうぉ今宵は楽しんで頂けたようですね。賞金1億5432万円です!!』


健太「そんなのどうでも良いんです!! 奈々は!!?」


GM『そして、森下健太さん。貴方には次の鬼になって貰います』


健太「……え? 鬼?」


GM『次の鬼になって貰う』


健太「いや……鬼って? え?」


GM『ならなければ、賞金はないぞ?』


健太「要らない! 賞金なんて要らない!!」


GM『では、死ぬと言う事で良いんだな?』


健太「死ぬって……この血……やっぱり……」


GM『ゲームの事を公(おおやけ)にされては困りますので』


健太「ここから出すって!!」


GM『出れますよ? 死体になって』


健太「奈々!! 奈々!! 奈々を返せ!!」


GM『鬼になりますか? それとも死にますか?』


健太「奈々……奈々……ごめん……」


GM『鬼になりますか? それとも死にますか?』


健太「鬼になっても死ぬじゃないか!!」


GM『負けなければ良い。負けなければ生きられるし大金も手に入る』


健太「人を殺してまで……お金を手に入れたいなんて思わない!!」


GM『今までの鬼を思い返すと、奈々さんはとても優秀な鬼だった』


健太「……奈々」


GM『奈々さんは自分の命を引き換えにお前を助けたんだぞ? 無駄にして良いんだな?』


健太「奈々は……どんな思いで鬼をしてたんだろ……。何も知らなかった。何も出来なかった」


GM『森下健太さん。鬼になりますか? 死にますか?』


健太「……奈々と同じ立場に立てば、少しでも近づけるのかな。知ることが出来るかな。一人で抱え込ませてごめん…」


GM『決まりましたね』


健太「……鬼になるよ。奈々を一人にさせないために」


GM『ようこそ、森下健太さん。沢山、紳士淑女の皆様を楽しませて下さいね』


健太「奈々……ごめんね」

 

 

GM「やはり、奈々さんの幼馴染を入れたのは正解だったな。

 

さぁ次の子羊達は誰かな」
 

 

─END─

・GM        ♂ 【不明】謎の人物。ゲームの支配人
・森下 健太(けんた ♂ 【19】責任感が強い性格。奈々のことが好き。
・田中 奈々(なな  ♀ 【19】大人しい性格で気弱な女の子。健太の幼馴染
・高橋 直斗(なおと ♂ 【22】気性の荒い性格。
・佐藤 由夢(ゆめ  ♀ 【25】大人な女性。

●役決め表

・GM    :
・森下 健太 :
・田中 奈々 :
・高橋 直斗 :
・佐藤 由夢 :

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